コロナウイルスの規制緩和により今年に入り海外出張を再開している企業が増えています。しかし出張先の国ごとにビザを取得し、その都度時間のかかる入国審査手続きを受けることはとても手間がかかり、忙しいビジネスマンにとってはストレスとなります。
そこで今回は、海外出張の手続きが各段に楽になる「APECビジネストラベルカード(ABTC)」制度を解説します。
APECとは「Asia Pacific Economic Cooperation」の略で「アジア太平洋経済協力会議」のこと。太平洋を囲む地域の経済協力を進める枠組みで、1989年に日本、米国、オーストラリア、カナダ、韓国、シンガポールなど12カ国で発足。91年から中国、香港、台湾が、98年にロシア、ベトナム、ペルーが加わるなどして現在の21カ国・地域となりました。設立条約はなく、法的な義務付けを伴わない自主的な取り組みとして域内協力を進める場となっています。
APECビジネストラベルカード(ABTC)とは、APEC域内を頻繁に出張するビジネス関係者の移動を円滑にするために、制度参加国・地域の政府がビジネス関係者に対して発行する渡航・入国許可証です。
ABTCには以下のような大きなメリットがあります。
短期の商用目的(商談、業務連絡、市場調査、投資のための契約締結)であればビザなして入国審査を受けることができます。そのため出張の度にビザを取得する必要がなくなります。
専用レーンを利用できるため、空港などで長時間入国審査を待つ必要もなくなり、現地に到着後すぐに行動することができます。
ABTCは対象国への入国においてビザは不要ですので、ビザ申請手数料がかかりません。特定の国への出張が頻繁にある方にとっては出張費用の節約につながります。
日本国籍の方がビザ無しでのタイへの滞在が認められているのは、観光目的の場合のみです。商用目的の場合はビザの取得が必要です。
取り締まられているという事例が増えています。ABTCを取得・提示していれば商用目的であることは明白ですので、頻繁に出入国をされる方でも疑義をかけられることなくスムーズに入国することができます。
なお、新しい制度としてABTCをお持ちでない日本国籍の方でも2024年1月1日~2026年12月31日までの間、一時的にビジネス目的での30日以内の短期滞在での入国に対し、商用査証の取得を免除されます。
商用査証免除は入国時にタイ側の会社(商談先も含む)からの招聘状、証明書、会合・商談予約書等の 商用目的を証明できる書類 を入国審査時に提示する必要があります。
この制度では入国審査時に書類を確認されるため、不備・不足があると商用ビザ適応外になる可能性があります。また、タイ側の会社より招聘状などの書類を発行してもらう必要があり、企業側としても手間が増えます。
反面、ABTCの発行は事前申請制のため、入国審査時にパスポート・ABTC以外に書類を提示する必要はありません。また、タイ側の会社において招聘状などを発行する手間がなく入国準備がスムーズとなります。
双方の制度を比較すると、タイへ頻繫に出張に行かれる方にとってABTC制度はより利便性のあるものとなっています。
ABTCが利用できる国は、APEC加盟国である以下の国・地域です。
韓国・中国・台湾・香港・インドネシア・マレーシア・フィリピン・シンガポール・タイ・ブルネイ・ベトナム・パプアニューギニア・オーストラリア・ニュージーランド・米国・カナダ・メキシコ・ペルー・チリ・ロシア
主な申請要件として、①有効な日本国のパスポートを所持している②犯罪歴がない③貿易・投資実績がある企業等の経営者または従業員であること があげられますが、比較的申請ハードルは低いです。また、令和6年4月1日より全面オンライン申請に移行したため、郵送の手間が省け申請しやすくなりました。ABTCは専用アプリ上で発行され、アプリ上で提示するだけで入国審査が受けられます。
BPS国際行政書士法人では、経験豊富なスタッフがABTC申請のサポートを行っております。興味をお持ちの方はこちらからお気軽にお問い合わせください。