日本政府は、外国人起業家の在留資格「経営・管理」の要件を緩和し、高度人材の誘致を加速させる方針を打ち出しました。この取り組みは、日本のスタートアップ業界の活性化と国際競争力の向上を目的としています。本記事では、在留資格要件の緩和及び高度外国人材の優遇措置方針などについて解説します。
外国人が日本国内で会社を設立し、会社経営するためには、経営管理ビザ(経営・管理在留資格)が必要です。経営管理ビザとは、外国人が日本で会社経営や管理職として勤務するために必要な一種の就労ビザです。
経営管理ビザの取得要件は下記の通りです。
経営管理ビザを取得して日本で会社を設立するためには、事務所を確保する必要があります。また経営管理ビザを取得するには、独立した事務所が必要です。事務所ごとに明確な仕切りがないバーチャルオフィスやシェアオフィスでは事務所としては認められません。
また原則として、自宅として利用しているアパート、マンションなどを事務所とすることもできません。
経営管理ビザを取得するためには、経営管理ビザを取得する外国人本人による500万円の出資金が必要です。資本金もどのように資本金500万円を用意したのか、という出所を証明する必要があります。
日本で会社を経営するために取得する経営管理ビザでは、学歴や職歴要件は要求されていません。そのため、誰でも申請ができる反面、日本で会社経営ができるのかという、事業内容や収支見込み、事業計画書などを提出して、適正性、継続性と安定性を示して、ビジネスの実体があり、利益をだし事業継続できるのかという点について出入国在留管理局は審査します。何年にもわたって赤字を出し続けることが想定される会社は認められません。
2024年3月に資本金について、上記②の通りの手持ち資金だけでなく有償型の新株予約権(J-KISS型)の発行により調達した資金と組み合わせて条件を満たせば認めることを明確にしました。
この点について、新株予約権の発行による払込金の取扱については、以下の(1)・(2)両方を満みたす部分の金額について、「500万円」に計上することが可能です。
(1)新株予約権の発行によって払い込まれた、返済義務のない払込金であること
(2)上記(1)の払込金について、将来、新株予約権が権利行使されることで払込資本となる場合及び権利行使されずに失効し利益となる場合のいずれであっても、資本金として計上することとしていること
この変更により、事前に資金を用意できない外国人起業家でも、投資家から資金調達ができれば在留資格を取得しやすくなります。
2024年に経営管理ビザに関する指針において、当初1年間の在留を認める場合が多いのですが、その後、条件を満たせばより長期に更新でき、制限のない在留も可能であることにするかの検討をしています。
過去には、高度人材の受入れを促進するため、高度人材に対しポイント制を活用した出入国管理上の優遇措置を講ずる制度を2012年より導入しました。高度人材の活動内容を高度学術研究活動、高度専門・技術活動、高度経営・管理活動の3つに分類し,それぞれの特性に応じて、「学歴」、「職歴」、「年収」などの項目ごとにポイントを設け,ポイントの合計が70点に達した場合に、出入国管理上の優遇措置を与えます。
また、2023年4月から特別高度人材制度(J-Skip)が導入され、年収2000万円以上の技術者らが1年の滞在で永住権を申請できる制度を新設しました。これまでの高度人材ポイント制とは別途、学歴又は職歴と、年収が一定の水準以上であれば「高度専門職」の在留資格を付与し、“特別高度人材”として現行よりも拡充した優遇措置を認めることとなりました。(参考資料)
さらに、2024年には、スタートアップに投資する外国人「エンジェル投資家」が特区で在留可能になることを検討しています。
具体的な優遇措置について、下記の通りです。
①在留資格の審査期間が短縮される。
②「5年」の在留期間が与えられる。
※法律上の最長の在留期間である「5年」が一律に付与されます。
③「永住権」が取得しやすくなる。
※ポイントが70点以上だと在留期間が「3年」、80点以上だと「1年」で申請が可能です。最大で9年の在留期間を短縮できるのは、大きなイニシアティブといえるでしょう。
④一定の条件で親や家事使用人の帯同が認められる。
⑤配偶者の就労も優遇される。(参考資料)
これらの優遇措置は、世界各国で激化する人材獲得競争の中で、日本の魅力を高める重要な施策と言えます。高度外国人材の増加は、海外の最先端技術や新たな発想の取り込みを促進し、日本のイノベーション力を高めることが期待されます。
経営管理ビザの取得や有償型の新株予約権(J-KISS型)の詳細などについてご興味のある方はお気軽にこちらからお気軽にお問い合わせください。