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外国人に適用される日本の年金制度

少子高齢化の進展により、人手不足がより深刻となり、外国人材に頼らざるを得ない状況から、2019年には、特定技能ビザ制度が新設され、外国人材の受け入れが飛躍的に増加することが予想されていましたが、新型コロナの蔓延によりこの革新的なビザ制度の活用は低迷していました。

しかし、コロナ明けによりいよいよ本格的に活用が予想されることとなってきています。

大企業においてはこの特定技能ビザの活用により進展している外国人材の活用ですが、中小企業においては、法律面やビザに関する知識不足から、今一つ採用まで踏み切れない企業が多いようです。

そこで、外国人材の採用における基礎的な法律をご理解いただくために外国人に適用される日本の年金制度について解説していきます。

日本の年金制度の概要

日本に住むすべての20歳以上60歳未満の人は、年金制度への加入が義務付けられています。国籍要件はありません。つまり日本国籍を持たない外国人の方であっても日本に住所を持ち、暮らしている限り年金制度に加入する義務があります。

2種類の年金

日本の年金は、「国民年金」「厚生年金」の2種類があります。

国民年金とは

日本に住むすべての20歳以上60歳未満の人が加入する年金です。

国民年金の被保険者は3つの種類に分けられます。

  1. 第一号被保険者:自営業者や学生、無職の人など
    (②③に該当しない人)
  2. 第二号被保険者:民間会社員や公務員など厚生年金、共済の加入者など
  3. 第三号被保険者:第二号被保険者に扶養されている配偶者など

国民年金は、基本的に自分自身で加入手続きを行う必要があります。

厚生年金とは

厚生年金は、国民年金の第二号被保険者(上記②)が国民年金に上乗せして加入する年金です。保険料は所得に応じて人それぞれ違うため、納付額も人によって異なります。勤めている会社(※ 強制適用事業所)が保険料の半分を負担し、会社員の半分の負担分も併せて全額をまとめて納める責任を負っています。

※強制適用事業所とは:事業主や個人の意思、企業の規模・業種に関係なく、社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入が義務付けられるすべての事業所のことです。株式会社などの法人や個人経営であっても従業員が5人以上の事業所は、強制適用事業所に該当します(業種に制限あり)。

外国人の方も年金に加入する義務がある?

前述の通り、外国人の方も国民年金・厚生年金に加入する義務があります。

外国人の方が日本に住み日本の企業で働く場合にはこれらの年金保険料は給料から天引きされます(②第2号被保険者に該当)。

一方で、日本に住む外国人の方が強制適用事業所以外の事業所で働くなどの場合には国民年金のみに加入することとなります。国民年金の場合は、自分自身で加入手続きをして月々の保険料を支払わなければなりません(①第一号被保険者に該当)。

母国に帰る予定の外国人の方が納めた年金はどうなるか?

外国人の方が将来母国に帰る場合や、母国の年金に加入している外国人の方の年金の受給や保険料について、不利益を避けるために設けられているのが「社会保障協定」「脱退一時金」の2つの制度です。

「社会保障協定」とは

母国ですでに年金に加入している外国人の方が、日本でも年金に加入すると、保険料を母国と日本で二重払いすることになってしまいます。

また日本において老齢年金を受給するためには保険料を10年以上支払う必要があります。そのため、年金を払い始めて10年経たず帰国する外国人の方は日本での年金受給資格を得られず、掛け捨てが発生してしまいます。これらの不利益を避けるために設けられているのが、社会保障協定です。社会保障協定には大きく以下の2つの目的があります。

  • 「保険料の二重負担」を防止するために加入するべき制度を二国間で調整する――二重加入の防止
  • 年金受給資格を確保するために、両国の年金制度への加入期間を通算することにより、年金受給のために必要とされる加入期間の要件を満たしやすくする――年金加入期間の通算

簡単に言えば年金加入期間を通算して、日本もしくは母国で年金を受給できるようにする規定です。社会保障協定の適用を受けるためには、外国人の方の母国が日本と社会保障協定を結んでいる必要があります。2022年6月時点において、日本は23ヶ国と協定を署名済で、うち22ヶ国は発効しています。

外国人労働者の出身者が多い国のうち日本と社会保険協定を締結し、発効している国をいくつかあげると、中国、フィリピン、ブラジル、韓国、アメリカなどがあげられます。日本が受け入れる外国人労働者の約20%を占めるベトナムとはまだ社会保障協定は結ばれていません。
ちなみに唯一の署名済未発行国はイタリアです。

「脱退一時金」とは

日本国籍を持たない外国人の方が、国民年金・厚生年金の被保険者の資格を喪失した後、転出届を提出し、さらに再入国期限を経過して日本を出国した場合、日本に住所を有しなくなった日から2年以内に脱退一時金を請求することができます。

脱退一時金は、日本の国民年金・厚生年金に加入した外国人の方が年金を受け取る前に母国に帰国した場合に受け取ることができます。

社会保障協定国の出身でない外国人の方は、帰国する際に脱退一時金を受け取るかを検討すべきでしょう。

社会保障協定国出身の外国人の方も、条件を満たせば脱退一時金の受け取りの選択も可能です。

ただし、脱退一時金を受け取ると日本における年金加入期間の通算ができなくなる点には注意が必要です。

国民年金・厚生年金の脱退一時金の支給要件及び計算式は次の通りです。

支給要件

国民年金および厚生年金の支給要件は次の通り非常に似通っていますが微妙に異なりますので注意が必要です。

《国民年金》

  • 保険料納付済期間等の月数の合計が6月以上あること
  • 日本国籍を有していないものであること
  • 被保険者でないこと
  • 日本国内に住所を有していないこと
  • 老齢基礎年金の受給資格期間を満たしていないこと
  • 障害基礎年金の受給権を有したことがないこと
  • 最後に公的年金制度の被保険者資格を喪失した日から2年以上経過していないこと

《厚生年金》

  • 被保険者期間が6月以上あること
  • 日本国籍を有していないものであること
  • 国民年金の被保険者でないこと
  • 日本国内に住所を有していないこと
  • 老齢基礎年金の受給資格期間を満たしていないこと
  • 障害基礎年金の受給権を有したことがないこと
  • 最後に公的年金制度の被保険者資格を喪失した日から2年以上経過していないこと
脱退一時金の額の計算式

《国民年金》

最後に保険料を納付した月が属する年度の保険料額×2分の1×保険料納付済期間等の月数に応じて政令で定める数

この計算に基づいて算出される具体的な支給額は次のとおりです(令和5年度)。

《厚生年金》

被保険者であった期間の平均標準報酬額×支給率(保険料率×2分の1×支給率計算に用いる数(※)

※支給率計算に用いる数

厚生年金の被保険者であった期間の平均標準報酬額は人それぞれ違うため支給額は示すことはできませんので具体例をあげておきます。

1,647,000円が脱退一時金となります。

まとめ

日本の年金制度には、外国人の方の保険料の二重払いや掛け捨てを防止するための仕組みがございますが、一括りに外国人の方と言っても、その方の母国や在留期間によって適用される制度はさまざまです。

社会保障協定が発効されている国の方は社会保障協定を使っての年金期間の通算もしくは脱退一時金の受給、社会保障協定が発効されていない国の方は脱退一時金の受給が検討に値します。

ただ、各個人の状況によって上記の情報が当てはまらない場合もございますので、ご不明点があればぜひBPSグループにお気軽にご相談ください。

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