少子高齢化の進展により、人手不足がより深刻となり、外国人材に頼らざるを得ない状況から、2019年には、特定技能ビザ制度が新設され、外国人材の受け入れが飛躍的に増加することが予想されていましたが、新型コロナの蔓延によりこの革新的なビザ制度の活用は低迷していました。
しかし、コロナ明けによりいよいよ本格的に活用が予想されることとなってきています。
大企業においてはこの特定技能ビザの活用により進展している外国人材の活用ですが、中小企業においては、法律面やビザに関する知識不足から、今一つ採用まで踏み切れない企業が多いようです。
そこで、外国人材の採用における基礎的な法律をご理解いただくためにそもそも「不法滞在」とは何なのかについて解説していきます。
「不法滞在」とは、外国人が許可なく日本国内に滞在している状態のことです。
ただ不法滞在と言っても、その状況に至った経緯や事情は様々です。
このため不法滞在は、次の3つのパターンに分類されます。
不法入国者とは、「有効なパスポート」等を持たず日本に入国・滞在する外国人のことです。
そもそもパスポートを持っていない(発行されていない)場合やパスポートの有効期限が切れている場合はもちろんのこと、他人のパスポートを使った場合、偽造パスポートや変造パスポート(無許可で写真を張替えたもの、氏名・生年月日などの記載事項を変更したもの)を使った場合も不法入国者となります。
不法上陸者とは、入国審査官から「上陸許可」を与えられないまま日本に上陸する外国人のことです。
具体的にはパスポート・在留資格の有効性、入国目的、滞在予定期間など、各種要件を満たす場合に与えられる一般的な上陸許可か、船舶や航空機の外国人乗員・乗客などに与えられる特例上陸許可(寄港地上陸許可、乗員上陸許可、船舶観光上陸許可、通過上陸許可など)のいずれも受けないまま上陸することを指します。
不法残留者とは、在留期間の更新や変更許可を受けないまま期間が経過し、そのまま日本に滞在し続ける外国人のことです。
当初は有効な在留資格で入国するという点が特徴で、比較的取得しやすい観光ビザなどで入国し、就労目的でそのまま滞在するケースなどです。
なお不法滞在している外国人でも原則として「外国人登録」が可能ですが、本来なら在留資格を記載する欄に「在留の資格なし」と記載されることになります。
「不法滞在」のほとんどはこの不法残留者です。
当然のことながら不法滞在には罰則規定があります。3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金で退去強制の対象です(ただし、不法残留者の場合には、出国命令制度で緩和される場合があります)。
罰則における退去強制とは、日本にいる外国人を強制的に国外に退去させる手続きをいいます。その後、5年間は日本に入ることは許されません。
不法在留、不法入国、不法残留、麻薬、売春などの犯罪行為はもちろんですが、アルバイトなどの資格外活動を専ら行っていた場合も含まれます。在留資格申請において偽造・変造文書を使用した場合も含まれます。
罰則における出国命令とは、合法的に入国したものの在留期間が切れた不法残留者に対する措置です。自主的に出頭した場合のみ、一定の期間内に自主的に日本を出国できる制度です。もちろん帰国の旅費等、十分な出国準備ができている場合に限ります。この場合には、5年の上陸拒否期間が1年に短縮されます。
不法滞在の外国人は、上記のように原則は強制退去で日本国外に退去させられ、その後一定期間は再び日本に入っていることはできません。ただし、日本人との結婚や日本国籍の子どもがいるなどの特別な事情がある場合には、例外的に日本に滞在し続けることができる場合があります。これが在留特別許可です。
在留特別許可は、許可という名前がついていますが、そのような正式な手続きがあるわけではなく、不法滞在者の違反調査の手続きの中で「どうしても日本を離れることができない特別の事情」がある場合に例外的に日本に滞在することを特別に認める限られた許可です。原則として、以下のような条件の人が当てはまります。
このような条件のもと、入国管理局に自主的に出頭して、特別な理由を説明した上で、違反調査の中で在留特別許可を願い出ます(ただし、違法であることには変わりないので違反調査は行われます)。在留特別許可が出た場合には正規の在留資格(日本人の配偶者、定住者など)が与えられますので、その後は就職をすることもできます。
在留特別許可の手続きは、通常のその他の在留資格手続きとは手続も提出書類も大きく異なり、事情によっては在留特別許可の手続きに移るよりも出国命令で一旦帰国した後に再入国するほうがよい場合もあり得ます。
不法就労外国人を雇用した場合の雇用主は、入管法における不法就労助長罪が適用され、
(1)事業活動に関し、外国人を雇用するなどして不法就労活動をさせる行為
(2)外国人に不法就労活動をさせるために、自己の支配下に置く行為
(3)業として、外国人に不法就労活動をさせる行為、又は(2)の行為に関しあっ旋する行為
を処罰の対象とし、これらに該当した者については3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれらを併科すると定められています。
BPS国際行政書士法人では、ビザ申請を中心とした外国人雇用のサポート及びコンサルティングを承っております(中国語、ベトナム語、ハングルネイティブ在籍)。外国人の雇用を検討していらっしゃる方々や興味をお持ちの方はこちらからお気軽にお問い合わせ下さい。